<商売のお時間>世の中って面白い!

 世の中は本当に「はてな?」に満ちてますね〜。

 たとえばバイキングって何だか不思議ですよね?

 あんな値段で食べ放題なんて、ちょっと経営大丈夫かな?と思ってしまいます。

 もちろん牛丼屋のように回転率が良くないとダメでしょうが、実はこれにはからくりがあるのです。

 バイキングというのは基本的にお客さんが好きなモノを好きなだけ取りに行きます。

 これ、お客さんからすると取り放題でもう嬉しくて仕方無いわけで、席に座るのももどかしく、大きな皿を片手に囲い込み(笑)を始めるわけですが、このことを経営者の視点で見ますと別の意味があるのです。

 いつの世も経営者の悩みのトップ3にくるものに人件費があります。

 人を雇えば、お金を払わないといけません。しかし、雇わなければ、儲けは丸取りですね。サラリーマンの一日の労働時間のうち、利益からすると二時間分くらいしかもらってないと聞いたことがあります。

 つまり残りの時間はタダ働きです。搾取(ピンはね)されているのですね。でも社長になれば、報酬はそのまま自分のものです(もっとも大半は運営資金に回すでしょうが)。

 もう分かったと思いますが、セルフサービスというのは、人件費がいらない(抑えられる)ということなのです。

 そして、ここが一番のミソですが、お客さんは取りに行かされてるとは思っていないのです。つまり、経営者側のマイナスとお客さまのプラスがうまく合致した見事な合わせ技なのですね。

 ファミレスのドリンクバーなんかもそうですが、お客さんは自分で好きなものを選んでると思っているわけで、まさか選ばされてるとは思わないでしょう。

 だから店員は少なくて済みます。人件費の削減ですね。

 目の前で作れば、できたてが食べられる感じがしてお得ですが、実際は運ぶ手間を省いているわけです。もしもこれが普通のお店なら、注文を取りにこない最悪の店というレッテルを貼られ、二度とその人は訪れないでしょう。

 バイキングでは食べ残しがあれば料金をとられるのが普通です。しかしこうすることで取りすぎが抑制されます。それはつまり作りすぎなくていい=無駄を省いているのです。

 他にもこの心理のすり替えには、たとえばセルフのうどん屋さんなんかがありますね。そこではお客さんは作る楽しみを味わうことで、人件費を節約しています。手打ちうどんの様子を見せているお店で、職人さんの手つきに思わずじっと見とれていると待ち時間なんてあっという間に過ぎますよね。
 実は僕も個人的にこれを応用しています。

 多分、みなさんも多かれ少なかれ、なさっているとは思うのですが、それは同時に物事を進めるということです。たとえば、インスタントラーメンができる間におかずの用意をしようとか、パソコンがたち上がる間に他のことをしようとか。

 つまり、待ち時間を利用して長さを意識しないようにしているのです。ゲームでもステージの合間に読み込みが頻繁に入ると中断させられたりして、ちょっとやる気をそがれますよね。そこで読み込み中にハードに負担がかからない程度のミニゲームをさせたり、次のシーンに入る前に演出でごまかしながら読み込みを始めていたりするわけです。

 ところで、やけに安いカラオケ屋さんにもからくりがあって、入ってみればワンドリンク制であったりします。これはマクドナルドの激安バーガーに代表されるように儲けのでないつかみを作っておいて、ポテトやサイドメニューなどでがっちり回収するのに似ています。

 あるカラオケ屋さんでは昼に行くと何とカラオケ代がタダだったりします。何か得した気分になりますが、実際は昼に誰も来ないので、ランチ代で回収しているのですね。

 まるで夜は料亭だけど昼間は弁当を売っているようなもんです。僕はカラオケが好きなので、よくフリータイムを利用しますが、大抵朝まで2000円くらいで貸し切りにできます。もちろん土日は少し高くなりますが、平日はかなり割安です。

 しかし、それは利用者が少ないというマイナス要因を逆手に取っているわけです。たまたま話に花が咲いて、終電に乗り遅れた時に別の店をはしごすれば、お金がかかりすぎるし、ホテル代も高い。何よりまだ遊んでいたいわけです。そこで、安くて騒げる店となると自然にカラオケという考え浮かぶわけです。

 以前テレビでお昼のフリータイムは主婦で賑わっているというのを取材していましたが、これは主婦にとってはルームサービス付きの貸し切り喫茶なのですね。いくら騒いでもいいし、おまけに歌い放題。さらに小さな子どもも室内で遊ばせれば安心です。飲み物や食べ物も注文できます。まさに至れり、尽くせり。

 しかし、実際は原価の安い飲食物で元を取っているわけです。まんが喫茶も普段なら料金が気になって何時間もいないでしょうが、フリータイムなら入るわけです。しかし、そこには確実にスーパーのカゴと同じ理屈が働いています。

 どういうことかと言えば、カゴというのは、持つとなかなか一つだけ商品を買おうという気にはなりません。ついつい、いろんなものを放り込んでしまう。100円ショップでも本当はマジック一本だけ買えばいいのに、電池が安いな、どうせ使うわけだしとついついいらない物まで買ってしまいます。

 結局高くついてしまうことはよくありますよね。ツタヤのレンタル半額キャンペーンもよくありますが、あれもついつい普段なら借りないようなものまでまとめ借りしちゃいます。

 いずれの場合も一番困るのは、決断力のある人目を気にしない単独者です。

 たとえば、バーガー一つだけ買って帰るサラリーマンとか、開店記念品だけ持って帰るおばちゃんですね(笑)

 マンガ喫茶のフリータイムも確実に一人頭の単価が増えるわけです。お客さんのまとめ買いですね(笑)室内の自販機で飲み物を買ってもらえれば確実に回収できるわけです。

 さて、ここからはスリムドカンで有名な銀座まるかんの創業者にして、長者番付けで毎年顔を出す齋藤一人さんのお話しから引用させて頂きますが、商人というのはお金じゃなくて頭を使わないといけないと一人さんは言います。お金が無いとうんうんうなってても何の解決にもなりません。

 そして、一流の商人かどうかは、ビラの書き方一つで分かるそうです。

 たとえばセルフサービスの給水機に「当店では飲料水はセルフサービスとなっております、ご了承下さい」なんてまんま書いてたらダメなんだそうです。

 そうではなくて「この水は体に良い天然のミネラルを豊富に含んでおります。どうぞ何杯でもご自由にお飲み下さい」と書いてあったらどうですか?

 思わず何回もつぎに行きたくなりますよね。バイキング効果と同じで、行為は同じでもたったビラ一枚変えることでやらされてる感がありません。

 僕がよく通る道にもいろんな立て札がありますが、大抵は「〜するな!」といった禁止の文句です。中にはペットのフン始末しろ!なんてあります(笑)

 でもある時、感心したのは「これは私が毎日大切に育てている花です。どうかペットにトイレをさせないで下さい」と書いてあったことです。何か人柄がしのばれますよね。

 私たちは人間です。人間には感情があります。それを逆撫でするような文句より思わず足をとめてしまう心に響く言葉で書かれてあれば素直に聞けるものです。

 よくファーストフードや喫茶店の店先に黒板にチョークで書かれたメッセージがありますね。僕、あれを読むの結構好きなんです。たとえば「昨日はテストでした。予習したところが全然出なくて残念でした」なんて書いてあるとほほえましいものです。ちょっと入ってみようかなって気になりますよね。

 ほんとにちょっとしたことで人間の気持ちは変わってしまうのですね。

 世の中に満ちている謎もそうしたちょっとしたからくりで成り立っているのかもしれません。現在40万部を突破した『さおだけ屋はなぜつぶれないのか?』なんて、まさにそうですよね。

 人通りの無い高級フランス店や在庫だらけのお店なんて実に不思議です。

 この本では、それを会計学的にあたかも探偵ナイトスクープのノリで解明しています。なかなか面白いし、タメになりますよ。

 

変な人が書いた心が千分の一だけ軽くなる話

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さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

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