<マンガのお時間>デスノートにみるパラドクス

 え〜、みなさんお久しぶりです。ほんとに。

 こんなネットの片隅のつぶやきにわざわざ指を(笑)運んで頂いて僕は本当に嬉しく思っています。たとえ通りすがりの期待外れであったとしても、人とのつながりを感じることは素敵な体験だと思います。

 少しでも面白いお話をと思いながら、書きたいことは毎日のように増えるのですが、なかなか時間が(と言い訳)無いのです。勉強する時間も、ですが。これからも末永くよろしくお願いしますね。

 さて、本日はマンガのお時間です。

 えっ?いつもマンガの話ばっかりでしたっけ?

 今日、ご紹介するのは話題騒然!前代未聞!空前絶後!の大人気マンガ『デスノート』なのであります。

 このマンガは現在、週刊少年ジャンプに連載されています。しかし、こんな緻密な頭脳戦を、今の子は理解してしまうのでしょうか?

 ニュータイプ

 重力に魂を引かれたオールドタイプの僕には理解しがたいことなのであります。(文章にノイズが入ったことをここにお詫びします)

 物語は一人の高校生が死神(この辺りはマンガですね〜)の落とした一冊のノートを拾ったことから端を発します。彼の名は夜神 月(やがみらいと)、全国模試で1位になるほどの秀才です。さて、このデスノートに名前を書くと書かれた本人に死が訪れます。まさにデスノートです。

 そこで彼はこれを利用して、この世から悪人を消し去ろうと考えるわけですが、その方法がとても高校生とは思えない、用意周到な計画なのです。やがて物語は日本全土を震撼とさせる壮大なスケールへと発展していきます。

 マンガを読んでもらえれば、驚愕の連続にあなたは息をすることさえ忘れてしまうでしょう。衝撃の内容に眠れないかもしれません。くれぐれも夜には読まないよーに。(実際、僕を含めて周りの人は夜更かししまくりでした)

 今回、この時間でデスノートを取り上げたのはなぜこんなに面白いのか?

 ここに「はてな?」と思ったのです。

 このマンガの面白さは一言でいえば、論理の面白さですね。

 これは福本伸行さんの作品にも言えることですが、ある結論を導くために他の推論を持ち出し、相対的な判断を基に思考を進める。この道筋がたまらなく面白いのです。

 ところでパラドクスというのをご存じでしょうか?

 たとえば、昔からある代表的なパラドクスに『うそつきのパラドクス』というのがあります。

 ある人が「私がいま話していることはウソです。」と言ったとしましょう。

 この人の発言はウソでしょうか?

 ホントでしょうか?

 もしこのセリフがホントだとすると、ウソを言ってることになるわけですから、ウソのウソはホントなわけですね。つまり、この発言はホントに戻るわけです。

 しかーし、また元のホントの発言ということに戻るわけですから、以下、同じことが起こり、ウソ→ホント→ウソ→ホント…と、永遠に真否がぐるぐる回り続けることになるのです。

 こういった矛盾は「張り紙禁止」と書いた張り紙や、「静かにしろ!」という怒鳴り声など、けっこう身近にあふれているものです。

 デスノート第3巻には、ライトの正体がキラ(デスノートを使って殺人を行う者の俗称)ではないかと疑ったエルがライトとテニスの試合をすることで性格分析を試みるシーンがあります。

 ここにはパラドクスの面白さが見事に表れています。では心のセリフをザッと引用します。

 エル「安心しろ、夜神。キラは負けず嫌いだが、キラでなくとも試合に勝ちたいと思うのが大多数だ」

 ライト「ムキになって勝ちにいくとキラっぽい…か?だからといって、わざと負ければムキになって勝ちにいくとキラっぽいと思われるからわざと負ける所がキラっぽいーだろ?」

 ライト「結局、同じ事!」

 まさにウソのパラドクスと同じように無限ループに陥るわけです。

 こういうパラドクスの面白さで僕が思い出すのは土屋賢二さんですね。

 土屋さんは現在、お茶の水女子大学教授であり、哲学を教えられています。その実績は優秀な生徒に哲学談義でやりこめられる程なのですが、我々は土屋先生のエッセイでその失態の一部を見ることができます。早速、いくつか引用致しますと、

 「わたしはこれまで記憶しきれないほどのアドバイスをしてきた。その証拠に、二、三回しかアドバイスした記憶しか残っていない。」

 「よく完璧な人間なんかいないといわれるが、不可解でならない。わたしが目の前にいるのにこう主張する人がいるし、まわりの連中は、自分を完璧な人間だと思い込んでいるとしか思えないような人間ばかりなのだ。」

 「毎週毎週、質の高い文章を書き続けることはきわめて困難である。どれほど困難なことであるかは、本書を読めば分かって頂けるであろう。」

 「休日だというのに、しなくてはならない仕事がある。仕事というものは、なぜしなくてはならないものばかりなのだろうか。しなくてもいい仕事や、してはいけない仕事ばかりだったら、きっと仕事が好きになっていただろう。」

 「自分の真の姿を他人に知られたいと思う人間がいるだろうか。マトモな人間なら、自分がマトモな人間ではないことが分かっているはずだ。」

 「わたしはこれまで多くの学生を教えてきた。どこに出しても恥ずかしくないような人間を世に送り出してきたつもりである。少なくとも、どこに出ても恥ずかしさを感じないような人間にはなっているはずである。」

 などなど。知らないことを知っているという無知の知や自信が無いことには自信があるといった種類のものと同じおかしさがここにはあります。

 その人気ぶりは、多数の在庫を誇り、在庫を増やす手腕には定評があることからも容易に伺えます。
 最後に、今日の僕のパラドクスはデスノートを語りながら、大して語っていないことですね(笑)
 
 

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