<算数のお時間>解き方は一つじゃない!?

 今日は割り算の話をします。

 またかよ。
 またですか?
 またやん。
 またですかいの〜。
 またじゃん!

 と思ってくれたあなたは前々回の算数のお時間を読んでくれた熱心で心優しい方である。

 そういう人が僕は好きだし、そういう人のためにこそ、今日もちょっといい話、あるいはちょっとどうでもいい話をしたいと思う。

 さて、割り算の話である。

 今日僕は、先日録画していた小学四年生向けの算数の番組を見ていた。

 変な人であるが、変態ではない、念のため。

 その教室では、ある女の子が作った問題を解こうということになっていた。

 ではみなさんもお考えください。

 大丈夫、簡単だから。

 問題:ここに42本のつくしがあります。4人で分けると1人何本もらえるでしょうか?

 ネッ、簡単でしょ?

 つくしが何本なんて、実に春らしくて微笑ましいではないですか?

 これが、

 問題:ここに謎の白い粉が入った小袋が42袋あります。目がうつろな怪しい4人のおじさんが舌なめずりをして欲しがっています。さて1人、何袋ゆき渡るでしょうか?じゅるじゅる。

 なんてことになったら、本当に問題だと思いますよ。

 え〜と、何の話をしてたんでしたっけ?

 何かいい気分になってきてーって、ラリってどうする!

 今、気温何度ですか?

 さて、いたいけな少女が出した問題ちゃんと解きましょうね。

 何本ですか?

 はい、そこのあなた!

 「えっとぉ〜、48÷4だから、12本でぇ〜す!」

 って、どんなキャラやねん!

 あっ、もういいですか?

 そうですね、計算が速くて、計算高い僕は、瞬間でそのくらい分かっちゃったのである。あほか。

 で、当然のことながら、牛乳ビンの底のような分厚いメガネをかけた優等生(それこそいないか)が、あっさり答えて、はい終わり。そんな光景を僕は想像していたのであった。

 まず始めに一人の女の子が当てられて、黒板の前に出た。

 この子は一本一本つくしと見立てた線(もし時間があれば、もっと丹念に描いたかもしれない)を48本引いて、1人一本ずつ取っていけばいいと考え、4本ずつ丸で囲んでいき、結果、12個の丸で囲んだグループができた。

 だから、答えはそれぞれのグループから一本ずつもらえると考えて12本、正解!

 つまり、これが先程の48÷4=12を所轄の捜査官並みに地道な調査で行なった結果なのである。これが最もオーソドックスで、基本的な考え方だ。おそらくこの子は将来、公務員になるだろう。

 さて次に当てられたのが目のくりっとした男の子である。彼はなかなか面白いことを言った。

 まず48を二つに分けるのだという。

 大きな数を半分にすると分かりやすいと思ったのかもしれない。

 すると彼はこれを24÷4=6と解いた後、始めに半分にしたのだから、最後に2をかけて、6×2=12と答えた。

 正解である(笑)

 つまり、彼は24という数字を見慣れた数字と認識し、4で割ったのだ。おそらく九九の段に8×6(または6×8)=48となるのはすぐに思いついても、4という数字がそこに無いので、分けてみたのではないだろうか?

 素因数分解の考え方である。

 最初に2で割って、後で2倍するというところがちょっと計算好きっぽくて感心してしまったのは僕だけだろうか?

 荷物は半分にすると楽ですよね(笑)

 次の女の子にはもうちょびっと驚いた。

 この子は4の段で何かできないかと考えて、7が浮かび、4×7=28となり、48−28=20、これなら得意の九九で割れると考えて、20÷4=5となり、7+5=12、またしても正解である(笑)

 4の段に近い数字は無いかと考えて4×9を思いつかずにいきなり7と考えるところが気に入った(笑)

 4×9=36、48−36=12、12÷4=3、3+9=12という考え方がスマートだけど、この子は将来、発明家か芸術家になるかもしれない(笑)

 最後に出てきたちょっと緊張気味の女の子は、なかなか賢かった。

 まず、48を40と8に分ける。

 こうすれば、4の倍数であることはすぐに分かる。あとはそれぞれを4で割り、答えを足せばこれも正解である。

 位ごとに分けるという発想は、お金を使う時にはふだん無意識にしていることである。

 みなさんもレジでお金を渡す時、もっとも効率のいい(レジの人の手をあまりわずらわせない)つり銭を考えようと何げにしていることだと思う。

 以前、紹介した清水義範さんの『いやでも楽しめる算数』の中には漫画家サイバラさんのこんな話がある。

 サイバラ女史は九九が全くできないと言い切る。

 では、どうやって日常の計算をしているのかと言うと、

 120円のおかしを5つ買う時は、まず10倍して、1200円とした後に半分にするのだそうだ。6つ7つと買う時は、それに単価の120円を足していく。

 128円を8つなどという複雑な場合は、

 10倍にして、1280円弱とするそうだ(笑)

 いいでしょ、これ。

 でも日常の計算なんてこれでいいわけです。

 財布の中に大体いくらあればいいかという近似値さえ分かればそれでOKですよね。

 分かりやすい数字になるまで分けてみるという考えは、結構みなさん使っている発想だと思います。

 1000円とか5000円とか10000円とかおおざっぱな位取りで考える方が分かりやすくて早いですよね。(そこ、計算得意とか言わない!)
 
 さらに感心したのは先生の対応の仕方でした。常に「みんなこの考え方はどう思う?」と考えを促して進めていくのです。

 先生からみれば、思考の過程を読み取ることなんて一瞬です。

 中には明らかに間違った考え方もあるでしょう。

 正解を教えることは簡単なことです。しかし、大切なのは自分の頭で考えることです。自分の頭で考えたことはたとえ間違っていたとしても、記憶に残ります。

 考えは改めればいい。

 一番怖いのは、他人の思考を写し取ることで満足してしまうことではないでしょうか?

 今回僕は、なるほどいろんな解き方があるんだな〜と改めて思い、自らの思考の狭さを感じました。

 さて、解き方は一つではないということをこうして長々と書いていたら、偶然にも面白い経験をしたので、もう少し書き足そうと思います。

 実は今日、『電車男』を観て来たのですが(感想は僕のシネマレビューをご参照下さい)、その映画館というのが最上階にあるのです。

 で、レイトショーだったので、終電が近いこともあり、エレベーターで待ってられないな〜と、一階分だけある階段を下り、その先のエスカレーターで降りようとしたら、なぜか全て上向きなのです。

 僕は帰り客と共にまるでレミングスのように集団行動していたので、みんな一階下のフロアで団子無限兄弟になって立往生してしまいました。

 で、結局流されてエレベーター前に来たのですが、何と1階と8階直通なのです。

 ここは7階です。

 引き返したくてもまるで押し流されたへドロのように後から後から人がたまっていきます。

 いやいや、下に行くんだから下向きのボタンを押して1階に行くのを待てばいいんですよね。

 それはそうなんですけど、来るたび来るたび、ドアが開けばいっぱいなわけです。

 そりゃそうですよね、8階が映画館なんですから(僕らが元いた場所です)どんどんどんどん降りてくるんですよ(笑)

 焦れば焦るほど、空のエレベーターは来ません。と、ある人が誰も押さなかった上向きのボタンを押しました。

 さてどうなったでしょう?

 とっくに分かっている人(あるいはあの映画館に行きつけの人)なら説明するまでもないかもしれませんが、結果的には僕は8階にいる人より得をしたのです。

 つまり、1階で人々を吐き出したエレベーター男は、上向きボタンを忠実に認識し、8階へ戻る途中で空のまま停まります。(レイトショーの時間ですから、上に来る人などいません)

 そこへ我々、早く帰りたい男(あるいは女)はドサッと乗り込むのだキボ〜ン(すいません)。

 そしたら満員のまま、8階に行きますわな。

 そこでドアが開くわけだ(byざこば師匠)、そしたら、これから帰るゾ、電車やばいゾ男(しつこい!)女(さらにしつこい!)たちはびっくり仰天するわけだ(まだ続いてるのか!)。

 引田天功でもここまでびっくりさせないようなイリュージョンがそこにあるわけです(戻った)。

 さっき言ったようにもう上映する映画なんてないわけですから、そのからくりが分からない人は、こいつら(おまいらの方がいいかな)何やねん!って感じでしょう。

 上向きボタンを押すのに実際はそんなに時間はかかっていませんが、コロンブスの卵やニュートンと同じく最初に押した人は偉いですね。

 仕組みを理解し、マネるのは簡単です。僕の後の人たちはこの行動伝言ゲームを再現し、後世の人に伝えたことでしょう。

 つまり、この場合も正解は一つではなかったのです。

 もしも8階でそのままエレベーターを待っていたら、僕はもっと遅い電車に乗っていたかもしれません。

 最後に、面白いことを考えることにかけては負けるわけにはいかないこの僕は、何とか子ども達に勝てないかと(笑)考えた末、ひらめきました!

 48を横に足して、4+8で12!

 ………。

 これは気まぐれという名のまぐれですね。

 以上、終電男(結局、終電かいっ!)が語る「真実は一つじゃない!めざせ打倒名探偵コナン、明日は我が身だ、飛び出せ青春、今度はあなたが主役です」でした。

 24時間テレビか、おそまつ。

 

いやでも楽しめる算数 (講談社文庫)

いやでも楽しめる算数 (講談社文庫)