<小説のお時間>〜今週の伊藤くんのひとりごと
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またこんな夢を見た。
隣にあぶらぎった険しい顔つきのおじさんがいる。
そしてなぜか電話で悩み相談を渋い顔をしながら聞いているのである。
この男はー。
伊藤くんもおもいッきり悩みを聞いているのである、なぜか。
ホワイトボードには見事なまでの人間相関図が構築されていく。
聞き取りをしているのは目の前のおじさんなのに、である。
朝から晩まで働き、祗園で芸者遊びを満喫するおじさまが、である。
もうどうせなら24時間ガラス張りの中で実況中継でもすればいいのにと思うくらいテレビに出ずっぱりのおじさまである。
その番組に伊藤くんは出ている。
以下も全く余談の事ながら、今筆者はこの番組を見ている。
なぜこの男はこんなに人気があるのだろう。
話術がうまい。
それは確かだ。
まるで油売りのように(どこで売っているのだ?)独特の間を持っている。
話術の中でも特に長けた能力を一つ挙げるなら、それはタメ技だろう。タメ口のタメではない。悟空がかめはめ波を撃つ時にスローモーになる一瞬のあの動作である。
その最たるものがファイナルアンサーである。
もしもあの技が無ければ番組などものの10分で終わる。
ウルトラマンが登場早々、必殺技で怪獣を倒すようなものだ。
谷選手が開始早々、一本背負いを決めるようなものだ。
コナンがいきなり犯人を指名するようなものだ。
料理が出来上がっているのに中居くんが「オーダ〜」と叫ぶようなものである。
もういい。
もう十分です。
許して下さい。
母さん、お元気ですか?
私は罪深い人間です。
私は妻を殺しました。
半分もオチてない。
細々とした事をねちっこく書いてみてもつまらない。
これを業界用語でコマネチという。
そう、これは「こまごま」と読むのだ。「ほそぼそ」ではない。
でもこのブログはほそぼそとボソボソやっている。
くだらない。
夜中に何を書いているのだ。
あるいは夜中だから書いているのか。
そして、あなたは夜中だから読んでいるのか。
穴があったら入りたい。
墓穴を掘る事は得意なのだけど。
以上も余談であった。
午後は○○とは一体何なのか?
もうあんな事やこんな事を想像しちゃったりなんかするのである。
健康になるよと男が言えば、ココアが売れる。
たったひとことで、その日紹介された商品がスーパーから忽然と姿を消す。
オイルショックならぬ、おばはんショックである。
しかし、取り違えてはいけない。
この男は人並み以上の並み外れた体力を持っているのだ。
確かにこんなに酒やけした人物が健康を口にすると説得力がある。しかし、常人がマネできる事では到底無い。
朝から晩まで働けますか?
毎日3時起きで、朝からあんなにテンション高くいられますか?
朝なのか夜なのか、これこそリアル白夜行ではないか。
我々はこの男が一体いつ倒れるのかとまるでギネスに挑戦する人間を見るように好奇の目を向ける。
ついに倒れたかと思いきや、何と病室から電話で話す元気はある。
リハビリだけでも一本の番組を作る勢いである。
よほどの借金があるのだろうか。
いや、そんな次元の話ではないだろう。
「奥さん、別れなさい。そんな旦那ダメだよ、ダメ」
男は手を横に振り、巨大な梅干しを食べたような顔をする。
唾液が出た。
人間とはやはり観念の生き物かもしれない。
こんな文章じゃあかんねん。
あきまへんねん。
この扉が開きまへんねん。
こんな電話をかけたら即座に切られてしまうか、キレられてしまうだろう。
誰かに悩みを聞いてもらいたい。でも、知り合いじゃ嫌だ。そんな煩悩を抱えた全国の主婦がこぞって電話をかけてくる。
そしてそれを全国の主婦がうんうんとうなずきながら見ているのである。彼女達にとってテレビを通して流れるお悩みは、どこかの誰かの相談事であって、そうではない。
女はみんな生まれ持って女優である。
彼女たちは一瞬にして感情移入してしまう。
そうする事で、刹那的に悩みを解消できるのだ。
うちの旦那もそうだとか、姑と相変わらず折り合いが悪いとか。
しかし、テレビを消した瞬間、ガラスの仮面はもろくも崩れ去る。
毎日順繰りに紹介される健康素材はつまるところバランス良く食事を取ればそれでいいのではないか?
言ってみれば、これもタメ技なのである。一気にメニューを紹介するのではなく小出しに食材を取り上げる。
ある食材を誉めれば、裏で泣いている素材がある。それをまんべんなく紹介していく。
タメてタメて、飲んで飲んで飲まれて飲んで、である。
時代遅れではない。
時代の波から超然としたところにこの番組は存在する。
この男は年を取っていない。
そんなわけは無いのだが、毎日見ていると変化に乏しい。
巨大な砂時計はひっくり返すまでに膨大な時間を必要とする。
そんな時計、誰が使うんだ?
放っとけい。
もう寝ます。
ごめんなさい。
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